揉み返し・好転反応って本当に「良くなるサイン」?
マッサージや指圧、鍼灸を受けたあとに
「痛みが出た」「体がだるくなった」
そんな経験はありませんか?
それを
「揉み返し」
「好転反応」
と言われ、
- 「それだけ体が悪かったんですね」
- 「良くなる途中だから心配いりません」
と説明されたことがある方も多いと思います。
では、それは本当に
“体が良くなっている証拠” なのでしょうか?
今回は
マッサージや施術のあとに起こる痛み・だるさの正体
について、わかりやすく解説します。
マッサージ・指圧の本来の作用
マッサージや指圧は、
- 押す
- 揉む
- 伸ばす
といった物理的な刺激を筋肉に加える施術です。
これにより、
- 筋肉のポンプ作用が外から促され、血液循環が改善する
- リズムある刺激が自律神経に働き、リラックスしやすくなる
- 圧刺激による体性―自律神経反射で、痛みが和らぐ
など、さまざまな良い反応が起こります。
ここまでは、医学的にも理解されている作用です。
なぜ「痛み」や「だるさ」が出るのか
一方で、忘れてはいけない点があります。
筋肉を強く押したり、無理に伸ばしたりすると、
ごく微細ではありますが、筋組織に損傷が起こることがあります。
これは、
- 微小な筋線維の断裂
- それに伴うごく小さな出血
といった反応です。
通常、適切な強さ・技術で行われた施術であれば、
この程度の変化は問題にならず、痛みとして感じることはほとんどありません。
しかし、
- 力が強すぎる
- 狙いが不正確
- 体の状態を無視した施術
が行われると、
損傷の範囲が大きくなり、痛みやだるさとして自覚されるようになります。
つまり、
施術後に出る痛みは「刺激が過剰だったサイン」
である場合が少なくありません。
「揉み返し」「好転反応」という言葉について
施術後の痛みやだるさを
「揉み返し」「好転反応」
と説明されることがあります。
ですが医学的には、
- 痛み=組織に負担がかかっている反応
- だるさ=自律神経や循環への影響、または炎症反応
と考えるのが自然です。
「好転反応」という言葉は、
かつて自律神経の反応などが十分に解明されていなかった時代に、
一時的な体調変化を説明するために使われていた概念です。
現在では、
痛みや不調を“良くなる過程だから”と一括りに説明する必要はありません。
痛みが出ているなら、
なぜ出たのかを説明できることが大切です。
鍼灸の場合はどうなのか?
鍼灸は、皮膚や筋肉に直接刺激を入れる施術です。
そのため、
- ごく少量の出血
- 刺激による一時的な重だるさ
が起こること自体は、完全にゼロにはできません。
ただし、
- 「強く響かせたほうが効く」
- 「たくさん刺せば良い」
- 「出血=悪い血(瘀血)が出た」
といった説明には、医学的な根拠はありません。
血液は全身を巡るもので、
「良い血」「悪い血」と明確に分けられるものではありません。
過度な刺激や出血は、
必要以上の組織損傷を招き、回復を遅らせる可能性があります。
強い刺激で「その場だけ楽」になる理由
強い刺激を加えると、
- 出血や炎症反応により一時的に血流が増える
- 痛みが一時的に抑制される
その結果、
「その場では楽になった」「動きやすくなった」
と感じることがあります。
しかしその後、
- 止血・修復反応による血流低下
- 膠原線維(いわゆる硬い組織)の増加
が起こると、
症状が戻る・むしろ悪化することもあります。
その場の変化だけを強調する施術には、注意が必要です。
筋膜系の強い施術について
最近よく見られる、
- 肘でゴリゴリ押す
- 強い痛みを伴う筋膜リリース
これも同様です。
一時的な血流増加で楽になったように感じても、
実際には**筋肉痛と同じ「筋損傷」**が起きていることがあります。
それを繰り返すことで、
- 修復のたびに硬い組織が増える
- 柔軟性が低下する
- 症状が慢性化する
というケースも少なくありません。
本当に信頼できる施術とは
大切なのは、
- その場でどう感じたか だけでなく
- その後、体がどう変化していくか
です。
信頼できる施術者は、
- 施術後に起こりうる反応
- いつ頃、どんな変化が出やすいか
を事前に説明してくれます。
「痛みが出たら全部好転反応」
ではなく、
体の反応をきちんと説明できるかどうかが重要です。
最後に
もしあなたが通っている施術院で、
- 揉み返しは仕方ない
- 好転反応だから我慢してください
とだけ言われているとしたら、
一度立ち止まって考えてみてください。
その説明は、
あなたの体を理解したものでしょうか?
それとも、
知識や技術の不足を、あなたの体のせいにしていないでしょうか?
体は、正しく扱えば、
必要以上に痛みを出さなくても変わっていきます。
「おしえてわか先生」は、
そんな視点から、体のことをお伝えしていきます。




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